私たちのようなモノづくりメーカーは、機能や品質を追求することが職務としてもっとも大事な部分になりますので、おのずとモノをつくるための設備のこと、それができるまでの加工技術について語りがちです。
ですが、いろいろな流通経路を経て、最終的にモノを買って使う消費者にとっては、極論そのような情報は不要だと思うのです。そういう情報を有難く感じてくれる中間業者さんや、モノづくりが好きで興味をお持ちの方にはきちんと説明しますし、私も導入した設備のことをSNSにアップしたりすることはありますが、そういう記事は一般の人たちに向けた記事ではなく、ものづくりしている仲間たちに、ウチはこんなことしてるよ、という近況報告のようなものにすぎません。
とくに当社がメインでつくっている商材はパッケージですので、関連業者や職業デザイナー、あるいはマーケターでもない限り、さりげもなく受け取られていることがほとんどですから、パッケージがどんな工程でできているとか、それの工数が多くて、どんなに加工が難儀だったとしても、だいじなのは買った商品であり、それを早く試してみたいという気持ちをもって、いちはやく除幕されるべきような立ち位置のものかもしれません。
当社に限らず、モノを造る加工現場の人たちには、さまざま材料の特性や、必要になる加工機器、それらの使い方や勘所など、これまでに積み上げてきた膨大な知識やデータを瞬間的に頭のなかから引出し、それらを手に宿して、苦心しながらモノづくりをしてくれています。それぞれにノウハウがあって、それらをマネして再現することなど、究極的には不可能であること、また品質や機能性を追求するモノづくりの現場の姿勢が、モノづくりメーカーの産みだせる価値の源泉であり、すべての土台であることは、現場作業をスタッフに頼っている私にも解ります。
ただ、それを直截的に語って伝えようと試みるのではなく、それらがおのずとにじみでて、じんわりと伝わるということが可能なら、そのほうがいいような気がしています。そのほうが難しいことかもしれませんが笑
いいものは、細部のこだわりやささいな気遣いや所作であっても、目立つことなくじんわりと伝わっている、きっとそうだろう。そうでなければ、それを続けるだけ。あれこれとモノづくりについて言葉を重ねずとも、これでいいのではないかと最近は思います。こだわりをもって作る、そういう姿勢を続けていることは、それらが積み重なったときおのずと感じ取ってもらえる。これは商品に限った話ではなく、会社の在り方もそうだと思っています。
良くしよう、良くなろう、そのためにはあれとこれをせねば!…というのとはちょっと違って、もっと自然体で、おのずと感じ取ってもらえる会社になれれば、それが最高にいいことだなと思っています。
2022.10.23