いまの日本では、いたるところに100円ショップやファストファッションのチェーン店があり、どこにいても機能的に行き届いたモノを安価に買い求めることができるようになっています。物質面では過去に比べられることのない豊かな時代です。
その分、モノとの向き合いかたも、これまでに前例のないほど変わってしまったように感じます。どんなものでも安く手軽に買える分、想い入れや愛着が染み込む間もなく、捨てたり、置き去りにしたり、失くしてしまったりすることに、躊躇や後悔も生まれないモノとの関係が多くなっているのではないでしょうか。
かくいう私自身も、モノを買うときに、機能が満たされるならなるべく安いものを買いもとめてきましたが、最近は考え方が少し変わってきました。そもそも、モノを買う機会が若いころとは比較できないほど少なくなりましたが、近ごろは少しばかり高くても、気に入ったもの、直感的につながりを感じられるようなモノとの出会いを期待するようになっています。
いいものを長く使ったほうが、コストパフォーマンスが良いので賢い買い物だ、という説明もたしかにそのとおりですが、コストパフォーマンスだけが理由ではありません。迷いにまよって、気に入って買ったモノに、メンテナンスや手入れの手間が必要なのだとしたら、面倒で時間や手間を浪費させられるという捉え方をする人も多いことでしょう。これは合理性ある判断なので、間違いではありません。ただ、見方を変えれば、そのような手間と時間は、モノと自分との関係を作り上げるプロセスになるのかもしれません。
モノと自分が、友達やパートナーとなって、道具とともに暮らすという感覚が、昔は強かったのではないでしょうか。友達やパートナーとなって付き合っていくモノとの出会いを特別なものにして、出会いを彩ってくれる、そんなパッケージやディスプレイアイテムを作ることを目指したいと、想いを新たにしているところです。